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火星有人宇宙船「オリオン」の無人機、来年秋に打ち上げ
2013-12-10 Tue 05:25
 NASA(米航空宇宙局)が火星有人飛行のために開発中の次世代有人宇宙船「オリオン」の無人機打ち上げが来年の9月に決まった。NASAは2030年代半ばまでの火星有人飛行の実現を目指し、来年秋から試験飛行を開始する。政府機関閉鎖の影響で中止が懸念されていた火星の大気を調べる無人探査機「メイブン」の打ち上げも予定通り11月18日に行われ成功している。米国の威信をかけた“火星一番乗り”に向け、準備は着々と進んでいるが、片道だけで半年以上かかる過酷な旅を克服するには、解決すべき課題も山積している。

月面軌道上の「オリオン宇宙船」(Credit: NASA) 
オリオン宇宙船


来年9月、無人で試験

 「われわれの計画は、最終段階に来ている。(打ち上げは)すでに軌道に乗った」。NASA、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)とともにオリオンの開発を担う米航空・宇宙企業ロッキード・マーチンでプロジェクトを担当するラリー・プライス氏は、米NBCニュースにこう語った。

 組み立てはフロリダ州のケネディ宇宙センターで行われており、今月下旬には電源をオンにして電子機器やソフトウエアが正常に作動することを確認。火星飛行で想定される無数のリスクに備えたテストも終えたという。

 NASAの公式サイトによると、スペースシャトルの後継機として開発されているオリオンは、月面着陸を実現したアポロ宇宙船に似た円錐形のカプセル型。定員は4人で、直径約5メートルと、3人乗りのアポロよりもふた回りほど大きく、容積も約3倍を確保した。羽のような太陽電池パネル4枚を備えている。


オリオン宇宙船と機械船の想像図(Credit:NASA)
オリオン宇宙船と機械船


 来年9月にまず無人での飛行試験を行う。ロケットで国際宇宙ステーション(ISS)がある高度の約15倍に相当する5800キロの上空まで打ち上げ、地球を2周した後、秒速9キロで大気圏に突入し帰還する。宇宙船の表面温度は約2200度にも達し、過酷な地球大気圏への再突入に耐えられるかを試す。

 17年には、同時に開発を進めているオリオン専用の大型ロケットを使った無人飛行試験を実施。21年に初の有人飛行に挑み、月軌道へ打ち上げる計画だ。すでに有人飛行を行う宇宙飛行士候補8人の精鋭を選出し訓練を行っている。

放射線対策など課題

 一方、無人探査機メイブンは、来年9月に火星に到達し上空から大気の状況などを調査する。すでに火星に着陸して活動中の無人探査機「キュリオシティー」の観測データも併せ、宇宙飛行士が火星に着陸して探査活動を行うためのプランを練るのが狙いだ。

今年11月18日に打ち上げられた火星大気探査機メイブン(Credit: NASA)
MAVEN.jpg


 だが、火星への旅は過酷だ。直線距離は最短でも約5500万キロと、アポロが経験した月までの約38万キロの約145倍に上り、最低で片道半年もかかる。現在開発中のオリオンは、宇宙空間で最大6人が21日間生活できる性能しか備えておらず、酸素や飲料水、食料の確保を含め大幅に滞在可能期間を延ばす必要がある。

 最大の課題とされるのが、宇宙飛行士の健康を蝕む宇宙放射線への対策だ。地球を取り囲む磁気圏外に出るため、従来の宇宙船の隔壁では十分に遮断できない強い銀河宇宙線を浴び続けることになる。キュリオシティーの測定データからは飛行士が浴びる放射線量は許容量を超える可能性があると判明した。NASAはこのため、火星有人飛行に参加した宇宙飛行士は、帰還後引退させる予定だという。


関連記事:NASAが新たな工程表 月面や小惑星探索など有人飛行へ準備着々

  米国が2030年代に実現を目指す火星旅行への動きが加速している。各国の宇宙機関と共同で今年8月、新たな工程表を作成したほか、来年には宇宙船の試験飛行が始まる。ただ、片道で半年以上の長旅は、飛行士が浴びる放射線対策など多くの課題を抱えている。

小惑星に足掛かり

 米航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)など世界の宇宙機関で組織する「国際宇宙探査協働グループ」は8月、有人火星飛行の工程表を2年ぶりに更新した。
 実現までの技術的な準備として月面探査や、月の軌道近くに小型の宇宙基地を設置して長期滞在する案に加え、NASAが今年1月に打ち出した小惑星の捕獲探査計画を新たな選択肢として盛り込んだ。工程表は国家間の正式合意ではないが、各宇宙機関はこれを念頭に研究を進める。
 米国は火星飛行への足掛かりとして小惑星探査を重視。21年にも直径7~10メートルの小惑星を無人宇宙船で捕獲して月の軌道付近まで運び、有人宇宙船で到着した飛行士が探査する計画だ。
米国はオバマ大統領が10年、火星周回軌道に人類を送り込む計画を発表。アポロ宇宙船に似た新型宇宙船「オリオン」と大型ロケット「SLS」の開発を着々と進めている。

   NASAの計画する小惑星開発
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今年1月、欧州宇宙機関(ESA)とオリオンの共同開発で合意。6月には将来、火星を目指す8人の飛行士候補を選出した。オリオンは来年、SLSは17年にまず無人で打ち上げる。
 SLSは上段エンジンを日米で共同開発する構想もある。今月、都内で会見したNASAのボールデン長官は、具体的な計画は未定としながらも「日本の推進系の技術は素晴らしく、SLSの開発でも非常に期待している」と述べた。

 銀河宇宙線が強敵

 火星までの直線距離は最短でも約5500万キロで、アポロで経験した月までの約38万キロをはるかにしのぐ。宇宙船やロケットの開発だけでなく、飛行士の健康面でも課題は多い。
 最大の懸案は発がんリスクを高める宇宙放射線だ。火星飛行では地球を取り囲む磁気圏を飛び出すため、エネルギーが強い銀河宇宙線を大量に浴び続ける。従来の宇宙船の壁では十分に遮蔽できない。NASAは5月、火星探査車「キュリオシティー」の測定から、飛行士が浴びる放射線量は許容量を超える可能性があることを明らかにした。
 JAXAの佐藤直樹・次世代宇宙船研究開発室長は「銀河宇宙線は太陽風によって吹き飛ばされるので、あえて太陽活動の極大期を選んで飛行することも対策の一つ」と説明する。
 飛行士の食料は、国際宇宙ステーション(ISS)では1年半ほどが消費期限。滅菌の強化などでこれを延ばし、長期の飛行に耐えるようにする。船内での野菜栽培や、動物性タンパク質を摂取するための食用カイコの養殖なども考えられている。
 無重力で長期間を過ごすと筋力が低下し、骨粗鬆(こつそしょう)症になるため運動などの対策が欠かせない。ISSの長期滞在は半年が基本だが、火星を視野に再来年には米露の飛行士が1年に挑み、体調の変化を調べる。月や火星への着陸を模擬するため、ISSから帰還した飛行士を休ませず、地上の重力環境でさらに仕事をさせて対策を探る研究も検討されている。

 日本の参加は白紙

 水や空気の浄化・再生は日本の得意技術とされる。ISSでは飛行士の尿や船内の水蒸気から飲料水を再生する米国の装置が稼働中だが、再生率は70%ほど。JAXAは省電力で再生率90%程度の装置を民間と研究しており、こうした日本の環境技術が火星飛行にも生かされる可能性がある。
 火星計画に日本が参加するかは白紙だが、JAXAの横山哲朗参与は「日本人飛行士はISSでの評価が高い。人類初の火星探査にも加わってほしい」と期待を込める。
 さまざまな困難を乗り越え、日本人は火星に到達できるのか。技術開発への貢献だけでなく、飛行士の実績も着実に重ねて存在感を維持する必要がありそうだ。(参照記事



    

  




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