SFファンのブログですが、宇宙、歴史、人物などもとりあげています…
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100年宇宙船
2012-09-02 Sun 07:03
アポロ11号で世界で初めて月面に降り立ったニール・アームストロング氏が8月25日に亡くなりました。

“これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である。
(That's one small step for [a] man, one giant leap for mankind.)”


と月面でアームストロング宇宙飛行士が語った言葉はあまりにも有名です。(アポロ11号についてはこちらに特別記事があります)

月面に降り立ったアームストロング船長
ニールアームストロング


さて、人類が月に到着したのは1969年7月20日。
それからすでに43年経ったわけですが、よく考えれば、あの当時予想されたほど宇宙開発は進んでいません。

ちなみに、LobyがSF映画の傑作と考える『2001年宇宙の旅』では、題名通り2001年には人類がすでに惑星間航行(木星まで)をやることになっていますが、2001年どころか、2010年(続編の『2010年宇宙の旅』ではソ連が木星まで宇宙船を送り込む話になっている)をとっくに過ぎた2012年になっても、人類は月から先に一歩も足を伸ばしていません。

もっともっと宇宙開発を進めて欲しいと思う気持ちと、偉大な足跡を宇宙開発史に残したニール・アームストロング氏の功績に思いを馳せつつ、今日は“人類の夢”である、恒星間旅行について話したいと思います。

                                       


このところ火星探査の話題(ニュース)でもりあがっていますが、NASAはかなり以前から火星へ“片道切符”の宇宙船を送り込む計画をもっていたそうです。この計画については、当ブログでも以前取り上げました(記事を見る)が、この「火星植民地パイオニア計画」には、NASAがやはり20年間ほど構想してきた「100年宇宙船-100-Year Starship」という計画が密接に関係しています。

そこで今日は、DARPA(国防高等研究計画局)が2011年に開催した『100-Year Starship Study』シンポジウムで様々なアイデアと議論がされた、惑星間宇宙船および恒星間宇宙船の話題も含め話しを展開したいと思います。

espaconave100anos.jpg


そもそも、シロウトが聞いたら無謀とも思える“片道切符”の火星旅行というのは、地球にもっとも近づいた時でさえ5600万キロもの距離がある火星へ人間を送り込むのには、膨大な量の食料・水、燃料などが必要となるため、とてつもなく巨大なロケット、もしくは5~6隻の宇宙船が必要となるからです。そしてこのようなビッグ計画は資金面でも技術面でもかなり困難。そこから片道切符”旅行という奇抜なアイデアが出たもの。つまりNASAの“苦肉の策”というわけです。

往復に1年半かかる火星旅行
m-04.jpg



さて、太陽系内の惑星であれ、太陽系外の恒星であれ、宇宙空間を長い間を航行するためには、克服すべきさまざまな難関があります。
太陽系に最も近い恒星(ケンタウルス座アルファ星)でさえ4光年あまり離れていおり、もっとも地球に似た系外惑星と言われるグリーズ581c(Glise-581c)にいたっては20光年以上もの距離があるのです。


Glise-581d.jpg


恒星間旅行

さて、今回は目標を太陽系外惑星、仮に上に挙げたグリーズ581cに定めるとして、どのようなロケット・宇宙船が必要なのか、またどのような問題をクリアしなければならないのかについて見てみたいと思います。

まず第一に、グリーズ581cまでは分かりやすい単位に変換すると190兆Kmの距離があり、現在考え得るもっとも速い宇宙船の速度(光速の10分の1)で航行したとしても約200年もかかるのです。これはあくまでも直線距離をベースとしての計算で、実際は太陽系内外の天体の重力などの影響があることから、いかなる推進装置をもつ宇宙船といえど直線には航行できない(相対性理論)ため、ヘタをすると(地球時間にして)300年とか400年とかかかるかもしれないのです。



推進方式

航行時間が50年も100年もかかる宇宙旅行の場合、現在主流の化学燃料エンジンは水力の弱さ、それと膨大な重量を積載しなければならないというハンデから、最初から除外します。

まず最初に実現の可能性が高い推進装置として挙げられるのが原子力エンジン。
「はやぶさ」で有名になったイオンエンジンも原子炉と組み合わせて使用すれば、より効率的になりますが、ここではより大きい推力と高い噴射速度(比推力)の両方を得られる原子力エンジンを見てみます。

原子力熱核ロケット
熱核ロケット (Nuclear thermal rocket) は、核分裂炉又は核融合炉の高熱により直接推進剤(通常は水素)を加熱膨張させ、ノズルから噴出して推進する方式。熱核ジェットともいわれる。
宇宙開発競争の最中、米ソ両国により研究が行われましたが、実用化にはいたりませんでした。米国の研究はNERVA計画(NERVA Project)と呼ばれたもので、サターンロケットの上段で使用することを検討。ソ連ではN-1ロケットへの搭載を目指して研究され、熱核ロケットエンジンのテストがセミパラチンスク核実験場で行われています。

米国のNERVAロケット
NERVAロケット


原子力核パルス推進
米国ではオリオン計画で検討がされました。オリオンは、1年以内に地球から冥王星に到達し、戻ってくることができる能力をもちます。

オリオン計画では核パルス推進エンジンの採用が検討された
恒星間宇宙船オリオン

NASA-NERVA-diagram.jpg



原子力プラズマロケット
一方、英国の「ダイダロス計画」(Project Daedalus)では、レーザー核融合ロケットエンジンを採用。電子ビームによる重水素/ヘリウム3のレーザー核融合を使い、1秒間に250個の燃料ペレットを核融合連続爆発させ、そこから生じたプラズマを磁場によるノズルにより制御する推進法が考えられました。

ダイダロス号は地球軌道に建設され、全長は195メートル、54,000トンの重量を持ち、そのうち燃料が50,000トン、実質的なペイロードは450トン。2段式の宇宙船として計画されていました。第1段ロケットは2.年間動作し、ダイダロス宇宙船を光速の7.1%まで加速した後、放棄され、第2段ロケットは1.76年間で宇宙船を光速の12%まで加速して停止、その後は慣性飛行を行います。

高さ195メートル、重量5万トンを超すダイダロス号
ダィダルス

ダイダルス比較


バサード・ラムジェット
宇宙空間中に散在している水素分子を主とする星間物質を強力な磁場によってかき集めて燃料(推進剤)にする、というのが「バサード・ラムジェット」(Bussard ramjet、恒星間ラムジェットとも)です。ラムジェットエンジンが、自身の、空気との相対速度自体によって作動することにちなんでつけられた名前で、理論上はバサード・ラムジェットが作動させられる速度までの加速に必要な燃料さえあれば、後はいくらでも加速できるという事になります。磁場を調節することで水素分子だけをラムスクープ(収集用の磁場を発生させる枠)に捉え、質量の大きな微小天体は素通りさせてしまう巨大なザルのようなものが想定されていて、宇宙船本体はザルの中心にぶら下がる形となります。

宇宙空間にある水素を燃料とするバサード・ラムジェット
バサードラムジェットエンジン

このシステムの問題は星間物質を集めるための磁場(ラムスクープ)の直径が惑星なみの大きさになる事、ラムスクープを形成するためのエネルギー、そして磁場が船内の機器や人体にあたえる影響の問題があります。また、星間水素密度が予想より遥かに薄く、1970年代にはバサード・ラムジェットは現実的には不可能であるとされています。

反物質ロケットエンジン
現在、恒星間航行を可能にする宇宙船の動力となる高エネルギー源として、もっとも有望視されているのは反物質です。加速器によって生成した反粒子を十分に冷却した状態で反応させると、安定した反物質(反水素)が生成できるため、これを安全に保存できる技術が確立されれば、有望なエネルギー源(正確にはエネルギーを保存する方法)として利用できる。ただし、現代の技術水準では1グラムの反物質を作るためには巨大加速器を100億年にわたって稼働させ、反物質を製造する必要があると言われています。

反物質ロケットのイラスト
反物質宇宙船

反物質ロケット

反物質ロケット噴射

ダイソン球と呼ばれる、恒星を巨大な人工構造物で覆って、恒星から発生するエネルギーを利用する超巨大な構造物のアイデアがあるが、これを利用して恒星の発するエネルギーをすべて反物質製造に費やせるなら、数年~数十年程度で恒星間航行に必要な動力が得られると云う計算がある。

ダイソン球の想像図
ダイソン球

これは実現の可能性はないとは言えないが、途方もないアイデアであり、そこまで大掛かりな装置で無くとも、公転軌道上に直径750m程の大きな粒子加速器付きの人工惑星(形状としては、太陽に向いた巨大アサガオのような物)を200個程度設置すれば、約20年ほどで恒星間航行が可能になるのに十分な反物質20トンが蓄えられるといいます。
現在の技術水準では、直径750mの人工惑星200個を太陽の公転軌道に乗せることも非常に難しいかもしれませんが、月面のマスドライバーや惑星軌道上の工場衛星が現実的な未来の話として挙がっている以上、まんざら途方もないSFの話とも決めつけられません。


亜光速旅行の問題点

さて、これまでに見てきた原子力ロケットエンジンは、すべて亜光速に達するものですが、太陽系外の惑星などに到着するためには超長期にわたる航行期間が必要であり、そのためには快適な居住スペースが不可欠です。これは無重力、もしくは弱い重力の環境に人間が長時間住むと生体機能に支障をきたすためです。そのほかにも寿命の問題や精神面の問題もあります。

恒星間宇宙船には有人・無人(ロボット宇宙船)の2種類があり、どちらのタイプを選択するかによって恒星間宇宙船に大きな違いをもたらしますが、ロボット宇宙船の場合なら致命的な故障となる機械的なトラブルも、十分な技術力を持つクルーがいる有人恒星船の場合なら、トラブルをクリアできるという大きなメリットがあります。
しかし、ロボット宇宙船では、型通りの調査活動や物質輸送には十分でもそれ以外の用途には意味をなさないと思われるため、ここでは主に有人恒星間宇宙船をメーンにとりあげ、どのような問題が出てくるのかを見てみます。

恒星間旅行には快適な居住スペースをもつ宇宙船が必要となる
space_ship.jpg

無人宇宙船にもメリットはあるが…
無人宇宙船

ロボット宇宙船の可能性及び問題点をテーマーにしたSFには『造物主の掟』がある






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